世界が終わってしまった日のこと

 去年の二月、一年くらい付き合っていた彼氏と連絡が突然取れなくなった。精神的に病んでいるような素振りを見せていたけれど、まさか連絡が取れなくなるなんて思ってもみなかった。

 ノンセクのことをカミングアウトしても離れていかなかった稀有な人で、私は彼のことを信頼していた。旅行に行ったときだって、彼は私のことを抱きしめただけで、何もしなかった。ただただ、一緒にいられればそれでいい。一緒にきれいな景色が見られればそれでいい。ずっと一緒にいて欲しい。彼はそう言って笑っていた。

 旅行に出かけたのも、結婚の約束をしたのも初めてだったし、彼は私の全てだった。

彼から、「離れてほしい」とLINEが来たのを最後に音信不通になってしまった。

 嗚咽しながら眠った次の日、私は世界に一人で放り出されたのと同じ気持ちだった。思えば、ノンセクだと自覚するよりずっと前から、私は世界の異分子だと思っていた。口を開けばおかしい、変わっていると言われ、周りに馴染めず浮き上がっているような気持ちをずっと抱えていた。彼だけは、「おもしろい」と言って穏やかに笑ってくれた。

 そんな彼がいなくなった。それから私は、彼のいない世界で抜け殻のように生きていた。

 パートナーが欲しい。私を受け入れてくれる存在が欲しい。思えば、中学生くらいからずっと渇望していたものを与えてくれた彼はもういない。彼がいなくなってから、幸せそうにしている友達に会うことすら苦痛でしかなかった。

 一年以上が経って、彼がいない世界で生きていく現実をようやく受け止められるようになってきた。

 けれど、今も渇望はとまらない。